断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

徒然

昨日に続き・・・ ところで、恒久性といえば、プラスチックの台紙を使っている方は、ぜひとも紙に替えていただきたいと思う。少なくとも中性紙を使えば半永久的に標本が保存できるが、プラスチックは時間が経つと必ず(!!)風化する。標本は歴史を背負うも…

先日はローマ字の誤った表記について説明したが、同様にローマ字表記の長音記号を省略してしまう人が多いことを問題視したい。ただでさえ同音異義語が多い日本語にあって、長音の有無はローマ字化された言葉を区別するのに極めて重要であることには言を俟た…

甲虫屋のMLで岸本さん(ハネカクシ、自然研)、亀澤さん(甲虫全般、もと平凡社編集)、林さん(ネクイハムシ)、吉冨さん(水生甲虫)を意見をやりとりした。結果、だいたい私の言っていることでOKではないかという結論(?)に達したようだ。ただし、編集…

そこでも話題になったのだが、ルリクワガタ属のPlatycerus delicatulusという種の和名が、慣れ親しんできたルリクワガタから「オオルリクワガタ」と改称提案されたようだ。 専門の研究者の措置にケチをつけるわけではないが、 では、ゲンゴロウはオオゲンゴ…

標本を扱う研究者はローマ字で地名を表記してラベルを作る場合が多いが、きっちり正確なローマ表記をしている人は意外に少ない。 以下、よくある誤り: 1)Ohshima (大島) 2)Shinjyuku (新宿) 3)Iccyôme (一丁目) どこが間違っているかお分かりだろうか…

たとえばオサムシの未同定種に対して、「オサムシの1種」と書いてあると何か違和感を覚える。「オサムシの一種」が正しいだろう。「1種」は「(厳密に)1個の種」という意味で、「一種」というと「ある一つの種」というような意味になるからである。「一種」…

さて、もし相当本気で甲虫の分類をやりたいという学生が現れたら、何を勧めるかというと、自分だったら絶対にツチハンミョウ科である。目立つ虫なので、世界の博物館に標本が多いこと、大きいので観察がしやすいこと、地理的な分布(気候・地史)の性質が明…

某氏の日記に「甲虫の分類をやりたい、と言う若者がいたら、とりあえず何でも自分の好きなものを極めることを勧める」とあったが、もし自分が分類の学生を持ったとしたら、そんなことはさせられない。また、「誰もやっていない」、「新種がたくさんいる」と…

もう一つ、多くの成果を挙げるのに必要な採集がある。それは土壌採集である。通常の採集では採れない土壌性の甲虫が採れる。まず、シフターという道具を使い、土壌を採集する。シフターの中段に1センチ目くらいの金網があり、地表の落葉落枝とその下の土をシ…

さて、専門外の分類群でも一通りの甲虫を採集しようと思ったのは、ウィーンの博物館を訪れた際、そこの館員たちの1回の調査の成果を見て圧倒されたからである。その成果とは量と質である。まず量がすごい。1度の調査で甲虫だけで数万頭は必ず押さえてくる。…

知り合いの研究者から、マレーシアのGombakで採集した糞虫に新種があり、記載するとのご連絡をいただいた。種小名はお世話になっているロスリーさんのお名前をお願いした。かなり大型で目立つものなので、きっと喜んでいただけるだろう。 いつも海外へ採集に…

和文の論文を読んでいて気になるが、以下のような文章。 原稿をお読みいただいたXX博士には厚くお礼申し上げる。 何か変だと思いませんか。「いただいた」がおかしい。少なくとも以下のように書けば問題ない。 原稿をお読みくださったXX博士には厚くお礼申し…

noriさんの日記で常体(である調)と敬体(ですます調)の話しになっていた。うん、たしかに教科書は敬体のほうが「無難」かもしれない。この日記もどちらで書こうか少しだけ迷ったことがあるが、ご覧のとおりの常体である。思うに、常体と敬体の大きな違い…

現在、バッタ目、ハエ目、ハチ目、チョウ目などと言われているものは、10年くらい前までそれぞれ直翅目、双翅目、膜翅目、鱗翅目と呼ばれていた。後者は正式名称であるOrthoptera、Diptera、Hymenoptera、Lepidopteraの漢字訳である。その他の目に関しても、…

思い出したのだが、一昨年だったか昆虫学会のシンポジウムで「昆虫学の未来を担う少年たち」というのがあって、そこで講演させていただいた。その折、「なんで『少年少女』じゃなくて『少年』なんですが?それは差別じゃないんですか?」と観客の一人に叱ら…

世論調査http://www.asahi.com/national/update/0910/TKY200609100089.htmlhttp://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006090901002584.html 自然保護を重要視する意見が大多数、外来種駆除が9割とは嬉しいニュースだ。 外来種に関して昨日、高桑さんから岩波科学に…

他人の文章を批判したり、赤を入れるのは、自分で言うのもなんだが得意である。しかし、自分の文章をほとんど客観的に見られないのは、大きな欠点である。今日も改めてそのことを深刻に思った。自分の文章をよく読むと、他人に指摘したような点を自分も行っ…

分類学を志すある学生にあるテーマが与えられた。それを聞いて、その内容のつまらなさと、テーマ選択の不可解さに驚いた。分類学の指導教官は、「だれもやっていないから」という理由ばかりで、学生にテーマを与えるのが主流のようだが、今回もその例に漏れ…

物が多いというのは、フットワークを重くする。今後何かと移動の機会が予想される身にとっては、深刻な悩みになる。本であれば、売ってしまったり、どこかに放っておいても大丈夫だが、問題は昆虫の乾燥標本である。今日、自分のハネカクシの標本箱を改めて…

週刊文春をたまに買うが、高島俊男の「お言葉ですが」という言語学に関するエッセイがいつも楽しみで、目から鱗が落ちることがしばしばである。今週は戦中に使われていた「蘭印」に関する考察だった。「オランダ領インドネシア(=ほぼ現在のインドネシア)…

この研究には一つの障害があって、それは標本が1個体のみ(検視標本が1個体のみ)であり、タイプ標本をAssing氏の私蔵標本コレクションに返さなくてはならないことだ。命名規約では、タイプ標本を公的機関に所蔵することを「勧告」されている(「規約」では…

さて、今回の論文の売りの部分は、旧北区の種をすべて扱った規模の大きさである。日本の大部分は旧北区に属すので、日本人もどんどんやっていい仕事だと思うが、気後れする人が多いのか、このような研究例を他の甲虫では聞かない。一方、日本を含めた旧北区…

某掲示板で、昆虫学用語の難しい読みについて、ちょっとした話題になっていた。たとえば、以下の用語: 後食(こうしょく) 大鰓(たいさい) 大歯(だいし) 棘毛(きょくもう) 肩歯(けんし) まあ、これはだいたい解決として、次に「後食」は「ごしょく…

それにしても、全く新しい分類群を始めるというのは、なにもかも新鮮で楽しい。しかし日本では、一分類学者が様々な分類群に幅広く手を伸ばすのはあまりいい目で見られないし、実際にそういう人は稀有な存在である。その理由は、専門の分類群の研究が疎かに…

少し前、わかむしのMLで「姓名順」について少し話題をもちかけ、反応からすると少なからぬ共感があったようだ。 この話題とは、ローマ字表記の「姓-名順」のことである。簡単に自分の意見をいうと、日本人が名前をローマ字表記するにあたり、「名-姓順」とす…

愛媛大の酒井先生の作っている「雑甲虫ニュースレター」を読み返していたら、興味深いというか、呆れてしまうような研究例が出ていた。 新種を記載するとき、その名前を担うタイプ標本というものを指定する。現代では、研究に使用した当該種の標本群から、唯…

蕎麦が好きで、有名店に遠くまで足を運ぶこともある。わずか二口で600円くらいもする神田藪蕎麦はたしかにうまいが、別物として立ち食い蕎麦で食べる蕎麦も結構好きだ。ちなみに、蕎麦というのは東京の文化であり、それなりの店に行けば、長野や新潟で食べる…

昆虫を分けるカテゴリーに、「馬鹿虫(ばかむし)」と「賢虫(かしこむし)」というのがある。文字通り知能に関するもので、ハチやアリやシロアリの社会性種は賢虫で、それ以外は馬鹿虫となる。(アブラムシにも、カーストを持ち社会性と定義されるものがい…