断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

塚本珪一・稲垣政志・河原正和・森正人「ふんコロ昆虫記 −食糞コガネムシを探そう−」を拝受。まずは日本に分布する糞虫の概説からはじまり、これが大変にわかりやすく、日本に分布する糞虫の魅力のすべてがわかるといっても過言ではない。続いて採集記として、日本に分布する珍品の発見談が紹介されている。最後に採集法、調べ方、標本の作り方、撮影法など、糞虫を調べる方法が述べられている。非常にマニアックだが、そういった内容を誰にでもわかるように丁寧に解説してあるところがすごい。その他、採集難易度付きリスト、分布表など、「親切」が一冊に詰まったような印象を持った。
ところで「日本産コガネムシ図説 第1巻 食糞群」の出版を成果とする同好者活躍により、日本産の糞虫は(他の昆虫に比べて)ほとんど調べつくされた感がある。私が虫を始めたころには「フン虫の採集と観察 (グリーンブックス 5)」しか入門書がなく、保育社の図鑑による同定も難しいものであって、多くの種がどこにいるかという見当さえつかなかった。とにかくわからないことばかりで、それだけに夢があり、初めて珍品(とされていた)マグソコガネの一種やダイコクコガネを採集したときの喜びはとても大きかった。この本はすばらしいが、わかっていることの多さに、わずかながら淋しさを感じた。もちろん、未だ不落の珍品もあるし、新種発見の可能性もまだまだあるので、この本で「わかっていること」を知り、それを武器にして、新発見を目指すことができるのは幸せなことだと思う。
http://kawamo.co.jp/roppon-ashi/sub026.htm