断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

某掲示板で、昆虫学用語の難しい読みについて、ちょっとした話題になっていた。たとえば、以下の用語:

 後食(こうしょく)

 大鰓(たいさい)

 大歯(だいし)

 棘毛(きょくもう)

 肩歯(けんし)

まあ、これはだいたい解決として、次に「後食」は「ごしょく」か「こうしょく」か、「大歯」は「たいし」か「だいし」かという話題に移った。答えは、前者は「こうしょく」が正解で、「ごしょく」は誤り。後者はどちらでもいい。

日本の漢字の音読みには大まかに呉音と漢音があって、発音がかなり違う場合が多い。簡単に言うと日本に伝来したもとの地域が違う。たとえば、「男女」は呉音では「ナンニョ」、漢音では「ダンジョ」となる。一般に呉音には濁らずに柔らかい音が多く、漢音は濁る音が多いが、逆の場合もある。また、呉漢共通のものもあるし、日本で別の音があてられたものもある。(現地の発音からすれば、全部「別の音」といえばそうだが。)現在の日本では漢音が優勢のようだ。

湯桶読み重箱読みと同様、音読みだけの場合にも漢呉読みや呉漢読みは好まれないようだ。「後食」に関しては、「後」では「コウ」が漢音「ゴ」が呉音、「食」では「ショク」が漢音、「ジキ」が呉音となるので、「コウショク」が正しい。「大歯」は、これも呉音と漢音の違いだが、「シ」が呉漢共通なので、どちらでもいいというわけ。

「肩歯」を「ケンシ」と読むか、「かたば」と読むかという話題もあったが、これは音読みと訓読みの違いで、どちらでもいいかもしれない。しかし一般に学術用語では音読みを好む傾向があるので、「ケンシ」のほうがなじみがいいと思う。「若虫」を「ジャクチュウ」と読むように。

学術用語には辞書に出ておらず、正確な読みを調べにくいものが多いが、漢和辞典で漢音か呉音か調べれば、かなり絞ることができるだろう。

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