断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

7時半に起きて朝食。今日は高久さんと澤田さんと私の帰国の日である。小林さんはあと10日程度、残って調査を行う。松林君とも今日でお別れで、彼の出勤を見送る。

15時半くらいにボゴールを出る予定なので、午前中は園内へ採集に出かけた。ブラブラしていると、昨日サラ山で採集したトゲオオハリアリ擬態のオオアリを見つけた。ここにもいたのか。いくつか捕まえているとき、このオオアリにもメジャーがいることがわかって驚いた。当たり前といえばそうだが。今日も数種のアリグモを見かけた。惜しいことに、アメイロオオアリにそっくりな初めて見る大型種の雄を逃してしまった。なんとか雌と幼体のみ得た。

ボゴール植物園は都市に孤立した森林であるが、そこで採集していて感じたことは、アリの種数と個体数に比した好蟻性昆虫の少なさである。寄主となるアリは見つかっても、好蟻性昆虫は一切見つからないことがほとんどである。たとえば、ヨコヅナアリ属のアリPheidologeton spp.の行列には、普通は数種のハネカクシとノミバエが見つかるものだが、ボゴールでは一種の好蟻性昆虫も見つからなかった。また、昨年はFITが当たり、多くの個体数の甲虫を得たが、そのなかで好蟻性昆虫はごくわずかだった。しかも、内容は単調で、数種が際立って優占するという、典型的な都市林の様相を呈していた。この状況は皇居や北大構内でも似たようなもので、通常は10種以上の好蟻性昆虫を擁するクサアリにも、ごくわずかなハネカクシしか見つからなかった。いくつかの原因は考えられるが、好蟻性昆虫がアリに比べて都市化や生息地の分断に弱いことはほぼ確かのようだ。

14時半にハルティニさんが迎えに来てくださり、15時半に植物園を出、16時40分に空港に着いた。ちょうどよい時間だったので、今回の旅行で終始お世話になった小林さんとハルティニさんに別れを告げ、早速チェックインをした。ハルティニさんとは3月9日のサッポロの会議で再会の予定である。

帰りは、高久さんと私がデンパサール経由で成田、澤田さんが同じくデンパサール経由で関空、デンパサールまでは3人一緒の予定だった。しかしなんと、澤田さんのチケットが何かの取り違いであることがわかり、澤田さんはガルーダの国内線でデンパサールまで行くことになった。また、エコノミーはすでにいっぱいで、うらやましいことに無料でビジネスに切り替えとなっていた。1時間ちょっとではあるが。

澤田さんとはカウンターでお別れし、出国手続きを行い、そのあとは小額をルピアに両替し、土産物探しをした。前回見た魚(フラワーホーン)の大きな置物と木彫りのカタツムリを買おうとしたのだが、2年前とは出物が随分変わっていて、結局これら目的の品は見つからなかった。仕方ないので、影にひっそりと置いてあった木彫りのドブネズミとキウィ(鳥)と猫を買った。折角両替したのだが、どうしても余ってしまったので、日本円に戻した。

搭乗口で高久さんと落ち合い、機内へ。デンパサール経由なので、春休みの若者で賑やかだ。男女数人のグループが多く、まさに青春という感じでうらやましく感じた。生まれ変わったらバリに遊びに行こう。

写真はヨコズナアリ属の一種、Pheidologeton cf. affinisの行列(ミミズを運ぶ)。