断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

藤原さんが起こしにきてくれて、なんとか8時半に起きて朝食をとる。今日はダラダラとい原稿を書きつつ、ヒメサスライアリ探しとヨコヅナアリのハネカクシの採集に少しだけ出向くことにした。午前中にまずヨコヅナアリの行列を篩いに行き、そこそこのハネカクシPheidoloxenus spp.を得る。小松君と会い、ケアシハエトリという高等な知能を持つというクモ食のクモを見せてもらう。すでに食後だったようで、空の巣の近くで休んでいた。

12時ごろに小松君が戻ってきたので、藤原さんと3人で昼食をとる。今日は細石君と片山君は5km下ったところにある滝へ行き、大島君は周辺のトレイルをまわっている。午後からゆっくりと原稿書き。

夕方に小松君が走って戻ってきた。ヒメサスライアリの移住行軍を見つけたという。5時過ぎだったので、早めに夕食をとり、その場所へ向かうことにする。Bishop trailの遠い側の入り口から5分ほど歩いたところで、少し遠い。てくてく歩いていたら、たまたま今日の昼から調査に来ていたというRosliさんが通りがかったので、車に乗せてもらい、トレイルの入り口でおろしてもらう。Rosliさんも見たいとのことで、3人で向かう。小松君は走る走る。道に横たわる大きな倒木に行軍が走っており、早速じっくりと観察する。18時10分ごろだった。

観察すること10分。早速ハネカクシがやってきた。Rosciszewskiaだ!Gombakをタイプ産地とするもので、アリそっくりの珍妙なハネカクシである。アリは何も考えずにツヤヒメサスライアリだと思い込んでいたが、ハネカクシでケブカヒメサスライアリAenictus gracilisであることに気付いた。Rosliさんに見せると、あまりにアリそっくりな姿に、とても驚いていた。こちらは涙が出るほど嬉しい。次にTrichotobia gracilisがアリにくわえられてやってきた。その後は20分おきくらいにRosciszewskiaが姿を見せ、最後のほうには姿を見せなくなった。もっと早く来ればよかった。今回も女王を採集でき、また、最後(21時50分)に驚くべきものを見た。行軍の最後尾にのそのそと羽を落とした雄アリが歩いてきたのだ。ヒメサスライアリでこのようなことが知られていたかな?少し調べないと。

その後、トレイルを正面の入り口の方向へ進み、キノコに集まる大きなハサミムシや、オオキノコムシ、トゲトゲのテントウダマシなどを採集しつつ進む。小松君が珍しいナガイボグモを見せてくれた。糸の束を獲物に吐き飛ばし、その周りをぐるぐるまわって捕らえるというクモだそうで、ゴキブリをクモに差し出したら、その通りの行動を見せてくれた。

部屋に帰り、顕微鏡でRosciszewskiaだと思っていたものを見ると、なんと2属2種が混じっていた。もう片方はAenictoterasという属のもので、これまた珍奇な姿をしている。

明日でBukit Fraserも最後。片付けを進めながら話し込んでいるうちに時計は1時をまわっていた。そういえばこのホテルにはわれわれのほか誰も泊まっておらず、毎日遅くまで騒ぎ放題だった。

写真:ケアシハエトリ。