断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

Tree of Life DNA projectの「Instructions for preserving and handling DNA specimens」
http://btol.tolweb.org/SpecimenPreservationInstructions

なかなか良いマニュアルだと思う。ただし、自分のやっている好蟻性昆虫では、1日頑張って1頭ということも少なくないので、最初から証拠標本を研究に使うことを目的としなければいけないが、その場合には、このマニュアルでは不十分なところがある。もちろん、昆虫の分類群と状況に応じてあまりにも異なるので、昆虫全般に応用できるマニュアルを作るのは難しいかもしれないが。

基本的に酢酸エチルで数時間殺し、その後に80%エタノールで固定しても、その後に何度かエタノールを交換し、しっかり凍らせておけば、PCRには問題がなかった(少なくとも2年くらい)。そういう標本はそのままピンに刺し、あるていど整形もできるので、DNAも取れて標本も作れるという一石二鳥となる。Mol.Ecol.に出ていたアセトン法は、標本が唐揚げ状態になってしまい、証拠標本の実用性がいまいちなので、おすすめできないし、そもそもほとんどの昆虫ではエタノールで十分といってよいだろう。前にも書いたが、自分はなぜかアセトンでは失敗(PCRできない)することが多かった。

シリカゲル乾燥も非常に良く、普通にPCRできている。酢酸エチルで殺し、タトウに並べたのち、大量のシリカゲルを入れた容器にタトウごと並べて急速に乾かせばよい。採集旅行で大量のシリカゲルを持ち運ぶのが難だが(火にかければ乾かせるが)、普通にきれいな標本がつくれるので、虫屋を味方にするには重要な方法といえる。ただし、お湯で再軟化したら終わり。乾燥した季節と場所では、普通に乾かしてもよいだろう。ただし、脂の多い虫はどうかわからない。

もちろん、アリのように大量に採れるものでは、普通に高濃度のアルコールに漬けておけば間違いない。