断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

標本を扱う研究者はローマ字で地名を表記してラベルを作る場合が多いが、きっちり正確なローマ表記をしている人は意外に少ない。

以下、よくある誤り:

1)Ohshima (大島)

2)Shinjyuku (新宿)

3)Iccyôme (一丁目)

どこが間違っているかお分かりだろうか。

以下、解説:

1)長音の「Oh」という表記法は、訓令式ヘボン式等、いかなるローマ字表記規則にもない(驚くべきことに、近年、外務省がパスポートの氏名表記にこの方式を認めたが)。「大分」や「大原」を同様に表記すれば、その不都合がわかる。つまり、それぞれ「Ohita オヒタ」、「Ohhara オッハラ」とも発音されることになる。この場合、Ôshima(ヘボン式)、Ôsima(訓令式)と書くのが正しい。

2)よくある間違い。「j」はそれだけで「ジャ行」を構成するので、「y」は不要。ヘボン式では「Shinjuku」が正解。訓令式では「ジャ行」は「zy」なので、「Sinzyuku」となる。

3)これもよくある。ヘボン式で「チャ行」は「ch」。訓令式では「ty」なので、両者を混同しているのだろう。正解は「Itchôme」。「チャ行」の撥音には「t」を付す。あるいは「Icchôme」でも間違いではないらしい。訓令式では「Ittyôme」。 ただし新日本式というのもあって、その体系では許される。

細かい話しだが、日本の地名を知っているわれわれならともかく、外国人など知らない人からすれば、表記が統一されていないと(なんらかのルールに則っていないと)混乱してしまうだろう。「oh」などという表記はすでに日本人の間で広く使われている感があるが、だからといって研究者が使っていいはずはない。実際、外国語で書かれたいかなる日本の地図にも「ô」を「oh」と表記したものはないはずなので(長音記号を省略したものならよくある)、日本語の地名を熟知していない他国の研究者は混乱するだろう。

ちなみに、採集者の名前は、OhshimaだろうがOoshimaだろうが、本人の使っているものを尊重すべきである。