断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

大阪自博の学芸員が中心となって編集された干潟観察の入門書が出た。干潟の生物の解説が中心で、干潟の成り立ちや物理的環境についてもわかりやすく説明してある。解説は大変わかりやすく、単純にとても楽しめたし、勉強にもなった。惜しむらくはカラー写真が少ないことだが、大事なものは押さえてあるし、そもそもこの価格では仕方ない。また、読者の大半は首都圏の自然度の低い干潟に親しく、限られた優占種を見ることしかできないだろう。にもかかわらず、本書には今では大変珍しい生物が目白押しで、そういった生物があたかも身近な干潟にも見られるかように書いてあるのは少々残酷に思えた。残酷というのは穏やかな表現ではないが、子供のころ、図鑑で見たダイコクコガネやコガタノゲンゴロウやナベブタムシを探しまわって見つからず、後年、それらは実は大変珍しい生物で、そう簡単には見つからないものだったことを知ったときの落胆を思い出した。それはともかく、干潟の生き物を知るには欠かせない良書である。帯の「干潟にハマってみませんか」というのも楽しい。最後に関連図書の網羅的な紹介があるのも親切だとおもう。

干潟を考える 干潟を遊ぶ (大阪市立自然史博物館叢書)

干潟を考える 干潟を遊ぶ (大阪市立自然史博物館叢書)