断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今回のマレーシアではほとんど撮影しなかった。重いカメラを持っていくんじゃなかった。
ということで、エクアドルの写真の続き。
クモがアリに擬態するというのは世界各地で当たり前の現象である。熱帯へ行かずとも日本にもアリに似たクモはいる。しかし、特定の種のアリに擬態する例はそれほど多くないようだ。これは今まで出会ったなかで最も見事な擬態の例である。上が手本(に違いない)のアリであるナベブタアリCephalotes atratus(滑空するアリとして有名)で、下がそれに真似たクモ(科は不明)である。アリは大型で、1センチほどあるが、クモも同じくらい大きい。よく見るとアリのように頭がはっきりしているわけではないし、トゲのある部分も違う。しかし、体表の艶消し具合といい、雰囲気は良く似ている。口では説明しにくいがよく似ている。まさにそんな雰囲気こそ擬態の本質なのだろう。もちろん、だまされる側の動物の立場にならないと本当に似ているかどうかはわからないが。(エクアドル、Arhchidona)
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※クモはカニグモ科のAphantochilus属の一種と判明。

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昨晩クアラルンプールを発ち、現在ソウルのインチョン空港で乗り換え待ち。
今回は北大の松村さん、東大の須島さん、京大の岸本さんと中瀬君、愛媛大の千田君、九大の三田君、松尾君が同行し、現地ではカミキリ屋の別府さん(マラヤ大へ赴任中)にもお世話になった。
実質1週間の短い調査だったが、面白そうな課題が見つかり、その点で実りの多い旅行だった。成果の一部は、早速、今年の昆虫学会で発表しようと思っている。
また、いつもお世話になっているマラヤ大のRosliさんへの恩返しに、今回から調査地のUlu Gombakの甲虫相を調べることを考えている。全分類群は無理なので、今回の下調べで、オオキノコムシ科、テントウダマシ科、ゴミムシダマシ科、コガネムシ上科に絞ることにした。5−6年の計画になりそうだ。その他、普通種の甲虫を一通り採集して、ちょっとしたハンドブックが作れればと思っている。これはRosliさんの頼みでもある。
ところで今回感心したのは、ハムシの形態と行動を調べている松村さんの頑張りだった。まさに寸暇を惜しんで採集し、最終日も出発直前まで網を振っていた。なんというか、研究に対するやる気を感じさせる採集だった。ほかには中瀬君をの様子を見てネジレバネ採集の難しさを改めて知った。ああいう材料で論文が書けるのだから立派なものだ。
いろんな分類群の専門家と行くと、行きなれた場所でも見慣れない虫が見られて面白い。目に見える範囲の森でも、そこには恐ろしいほどの種数の昆虫がいる。しかし、各種の個体数は非常に少なく、それをいかに引っ張り出すかが腕の見せ所である。
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以下、調査地における人々の風景。
 
 
 
ある日の採集品。