断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

ダイコンの薹が立ち始めたので、そろそろ収穫をはじめなければいけないのだが、なにしろ30本くらい植えてあるので食べきれそうもない。しかもまだ成長しきっていないので、今引っこ抜いてしまうのは、勿体ないような気もする。昨日から食べ始めたのだが、まだ鬆は入っていないし、もう少し成長させてもいいのだろうか。こういうときに農業の経験のある人が近くにいるといいのだが。誰か教えてください。
午後から大学へ行き、原稿を書く。ようやく完全に復調した。少なくとも考えながら文章を書くことができるようになった。
マラリアの薬をあと1錠飲まなければいけない。あきらかに体調が悪くなるので、もう飲みたくないが、医者の言う通りにしようと思う。蚊に刺された回数は少ないし、可能性としては低いのだが・・・。
マラリアといえば、2箇所目のキャンプ地で付き添ってくれた大学院生のDekoumは、鎌形赤血球症の家系だそうだ。兄弟は8人いるが、そのうち4人はホモ接合型で、3人は子供のうちに亡くなり、小学生の妹は失明してしまった上に寝たきりだそうだ。かなり普通な遺伝病のようで、簡単な検査で胎児の遺伝状態がわかるそうだ。彼は結婚間近だが、子供ができたら検査し、状況によっては中絶するしかないと話していた。
カメルーンでは、死は驚くほど身近なもののように感じられた。
これも彼に聞いたことだが、マラリアは家族の一人がかかると全員かかってしまうそうだ。日本で言えばインフルエンザや風邪のようなものなのかもしれないが、なにしろ症状が重いので、子供はどんどんと死んでしまうという。
若者同士の殺し合いも多く、運良くマラリアを通り抜けて大人になれても、若いうちに死ぬことが非常に多いという。どう殺すかというと、単純な殺し合いも多いし、簡単に引き受けてくれる殺し屋がどこにでもあって、気に入らない人がいると依頼して殺すという。金額を聞いたところ1万円から数万円程度で、現地の物価からするとかなりの高額だが、それでも手の届かないものではない。場所によっては学生の間にもそういう組織があるそうだ(サークルのようなもの)。
また、カメルーンHIVの感染率は5.5パーセントで、街中にもあきらかにそれと分かる人がいた。大学構内にも「AIDS is real」とか、もっと具体的な予防法など、予防を啓発する文言があちこちに貼られており、それ自体が蔓延の状況を強く実感させた。
カメルーン(もちろん他の西アフリカ諸国)には、他にも多数の致死的な感染症や治安に起因する身の危険がある。これらは、もちろん行く前から言葉では知っていたが、現地人と過ごして初めて「理解」できたような気がする。