断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

昨日、科学雑誌ネイチャーNatureにすごい記事が掲載されたのを知った。主役は我らがツノゼミである。ツノゼミの角は、昔から前胸背板が大きく発達したものだと思われてきた。しかし実は、前胸に翅の遺伝子が働いて出来た翅に相当する付属肢だったのである。そのことを示す形態学的な証拠として、ツノゼミの角はヘルメット状になっており、前胸の左右側方で幕質部でつながっている(つまり翅の付け根のような関節がある)様子も報告している。ふつう現生の昆虫では、中胸と後胸にそれぞれ1対ずつの翅(前翅と後翅)があるのみである。ツノゼミは、そこに新たに翅を生やし、それが中央で融合した。その「翅」には機能的な制約がないので、実にさまざまな形の「角」へと多様化を遂げたということである。ツノゼミの形の多様性は昆虫のなかで群を抜くものであるが、その重要な要因が判明したことになる。
個人的に気になるのは、ツノゼミ上科のほかの科の種はどうなっているかである。帰ったら何頭かつぶしてみよう。
http://www.nature.com/nature/journal/v473/n7345/full/nature09977.html
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ジュネーブの博物館の展示は本当にすばらしい。これまであちこちの欧米の博物館に行っているが、いろいろなバランスにおいて私にとっては最高の展示である。
今回お世話になったお茶好きのメルツさん。

白化型の展示。おしゃれ。マリークワント謹製、ではない。

絶滅したカワウソ。ジュネーブの水域は汚染が進んでいるので、再導入は無理であると言いきっているところがすばらしい。

多様性の縮図。全体的に教育的だが、展示の美しさと面白さのバランスがよいのである。

あちこちで人気のルーシー。かつて人類最古の祖先とされたアファール猿人。ルーシーのような可愛い名前より「ジャイ子」あたりが適切。