断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

休息のつもりが

今日は久しぶりに自宅でゆっくり休息することにしていた。しかし、やることがいろいろあって、とくに水曜の科博院生ゼミの準備が気になり、結局、深夜までずっとその作業をしてしまった。

今回のゼミは「アリ類における社会寄生の進化 ~全北区産ケアリ属を例として~」という題で、アリの社会寄生全般の簡単な紹介ののちに、自分の研究内容を話そうと思っている。人類学や古生物学などの遠い専門外の院生が多いので、いろいろな用語も紹介するのだが、煮詰めていくと普通に使っている用語にも問題が残っていることに気づく。たとえば、「社会寄生(social parasitism)」という言葉が何を意味するのがわからない。いや、わからないというか、使われ方に誤りが多く、本来の意味がぼやけてしまっている。本来ならば社会性種間の寄生系のみに使うべきだが、『The Ants』では社会性種と非社会性種の寄生系にも使っている。これでは、究極的にはアリの寄生虫も社会寄生種になってしまう。この点、Emery(1909)などの先人の人たちは、この2つの寄生系を明確に区別している。昔の人は偉かった。もちろん、アリの社会性種と非社会性の境界は段階的な場合があり、非社会性種も寄生により2次的に社会性を失ったのだから、厳密な使用は難しい。ところで、アリノスアブというアリの巣に寄生する昆虫に対しても、社会寄生という言葉を使った論文を見たことがあるが、これは行き過ぎである。