断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

週末は読書と好蟻性昆虫HP作成をして過ごした。本は吉村昭の「赤い人」と新田次郎の「珊瑚」。前者は北海道開拓で過酷な労働に従事した囚人たちの話、後者は五島列島で珊瑚漁に生きた人たちの話で、どちらも明治時代の史実を背景とした創作である。本当に面白かった。また、星新一の「おのぞみの結末」も読んだ。星新一は高校生のときにほとんど読破し、これも読んだはずだが、やはり面白い。

HP作成は順調で、公開を3月31日と決めた。それ以前に出来上がれば早めに公開する予定でいる。問題は使用する写真。標本写真は、過去に撮り貯めたものは気に入らないので、こんどの帰国時に撮り直す予定で、それまではこちらの博物館の標本を撮影させてもらおうと思っている。また、生態写真に関しては、何人かの協力者が得られた。本当にすばらしいものもある。HPの形式はごく単純なもので、ボタンやタイトルのgif画像は徹底的に排除し、できるだけ軽く見られるように心がけている。写真が多いので矛盾するかもしれないが。

この博物館へ来て文献(論文)の豊富さには本当に助かっている。古いもの関しては、よほどの珍しいものでないかぎり、雑誌から入手できる。しかし困るのは和書が見られないことである。昆虫関係の本が充実しているとはいえ、和書にあてる予算は少ないようで、とくに新しいものはほとんどない。今日も調べごとをしていて困ることがあったが、結果は帰国時に先延ばしということになった。

千葉県の友人から東京湾某所(美しい干潟のある場所)で採集された海のハネカクシの写真をお送りいただいた。同所は1996年に初めて訪れ、当時は良い環境がそこそこ残っていたので、オオキバナガミズギワゴミムシをはじめ、新属のウミハネカクシや新種のナギサハネカクシなどが採れた。しかし、その後環境は急変し、といっても、すでに急変しつつあったのだが、あっという間にその場所は消失してしまった。その後たびたび同地を訪れたが、成果はなかった。今日の写真はその時に採集したナギサハネカクシの新種で、大変驚くとともに、まだ環境が残っていたことに安心した。江戸前が復活しつつあるらしいが、海岸性昆虫も復活してほしい。