断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

教員として学生との付き合いが始まって4年が経った。このごろ有望が学生が複数現れて、学生の資質といったものや、教育というものについて考えさせられることが多い。最近、直接指導していたわけではないが、有望だったはずの身近な学生が2人揃ってやめてしまったという「事件」があって、ますます考えさせられる。(今思えば、そもそも2人は有望でもなんでもなかったのだろう。)
藤原正彦が以前著書に「研究者として大成するのに必要な4つの性格要件」というものを書いていたと知った。それは以下のものだそうだ。1.知的好奇心が強いこと、2.野心的であること、3.執拗であること、4.楽観的であること。いちいち納得できる。たしかに昆虫学という分野でも理想的な要件だと思う。しかし、この4つを満たす学生というのは滅多に現れない。九大の昆虫関係の学生で十分に満たしているのは、名指しして褒めるわけではないが、Y本君だけであろう。
しかし、こういうことを考えるたびに、K島大学のY根さんのお言葉には励まされる。「いろんな学生がいていい。みんな優秀で完璧だったらつまらないよ」 藤原正彦の言うことは、理想としては限りなく正しいと感じるが、あくまで個々人に対する理想中の理想である。研究者の世界だって、全員が大成するほどの能力がある必要はなく、いろんな人がいないとつまらない。
私が学生に求めるのは、目標や夢を持って、それに向けての具体的な努力の積み重ねをして欲しいということである。器用な人はその努力さえ効率的に行うことができるのだが、遠回りしてもよいと思う。(「いろんな学生がいていい」というのには強く同意するが、努力できない学生は「いろんな」に含まれないので念のため。)「具体的」というのが重要で、昆虫分類学だったら、大学教員や博物館の学芸員といった職業の選択肢があるが、それぞれに必要な技術なり知識の習得といったものがある。これについては、私もまだよくわからないところがあるが、いずれ書きたい。