断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

ネコの魅力

ネコは人気の動物だ。なんてことはわざわざ書く必要もあるまい。なんでネコがかわいいのか考えてみると、あの真顔がいいのだと思う。イヌよりも顔に喜怒哀楽が少なく、基本的に真顔をしている。真顔でドジをしたり、びっくりするくらいに自分勝手にふるまうのがいいのだ。それで思ったのだが、文章でも同じことである。文章で面白いことを書くとき、決して「笑った文章」を書いてはならない。笑った文章とは、やたらと抑揚が大きく、雰囲気で笑わせようとする文章である。読むほうはそういう文章に興ざめしてしまうものだ。真顔のネコのように、淡々とおかしなことを書くのが面白い。現在、研究者の仕事として大切なものに、研究成果の普及というものがあるのだが、残念なことにたいていの研究者の文章はわかりにくいし、面白くない。無理に面白く書こうとして、難しい内容のままの笑った文章も少なくない。大事なのは内容であり、興ざめ以下である。また、研究者の自尊心を保ちすぎ、一切の矛盾がないように、詰め込み過ぎて理解困難な文章もかなりある。そういうのはネコを通り過ぎて猛獣のトラやライオンになっているともいえる。なかにはフクロミツスイやキノボリイワダヌキやヤマバクみたいなよくわからない珍獣みたいな文章を書く人がいて、それはそれで面白いのだが、共感できる人はトキより少ないだろう。分かりやすい文章は、多少の情報不足に目をつぶって難しい文章をけずり、いかにわかりやすく伝えたいところだけを残すかである。ネコのような文章。私も練習中だが、なんといっても読む人の視点に立つのが一番の近道である。しかしそれがなんとも難しいのだ。