断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

城計画1 建築か建売か中古か

天神の町から歩いて帰れるマンションに住んでいた。狭いベランダで多肉植物を育てたり、部屋に大きな水槽を置いたり、畑をやりたいけど無理なので、郊外に農協の貸し農園を借りたりしてたら、住み続けることに窮屈さを感じてきた。もっと広い家で、温室を設置し、庭で農作業したい。庭に池を作ったり、虫の観察もしたい。

最初は借家を探していたが、なかなか出物がなく、勝手に温室を設置するのは難しいことがわかった。それでは家を買おうと思いたったのはこの春のことである。年齢的にローンが組める限界でもある。どうせなら自分の好きな間取りの一戸建てを建てたい。

それから土地探しが始まった。最初はどんな土地がいいのか見当さえつかなかったが、探しているうちに、金額の上限や、自分の求めている条件が見え始めた。すると、1カ月ほどで偶然良い土地が見つかった。それまでに何十ヶ所の物件に足を運んだだろうか。これだと思ったのは、駅に近い南に道路がある80坪の土地で、すぐに仮押さえをした。

次に、建築会社を決めて、間取りを決めて、設計と見積もりである。建築会社や不動産屋とやりとりし、いくつかの建築会社と繰り返し相談し、建築会社も2社に絞られた。人生最大の買い物であり、1カ月ほど熟考を重ねた。

ところが、いよいよ契約だというときに、私の仮押さえは反故にされ、より好条件で土地を買いたいという人に、数日早く売られてしまった。不動産屋の月末締めの焦りも災いした。これまでの苦労も水の泡。苦労して土地の値引き交渉や建築設計を進めてくれた建築会社の方になにより申し訳なかった。

福岡はとにかく土地がなく、これ以上の土地が見つかる気がしない。そこで、土地を買って家を建てるより、分譲か中古を買った方が確実だと思い始めた。

土地探しも継続しつつ、中古物件も探す。それからまた何十軒の見学をしただろうか。条件項目を削っていき、妥協点を見いだした結果、糸島市の駅からやや遠い場所で、しかし南向きの広い庭があり、まだ築の浅い中古物件が見つかった。

建物(上物)は築20年以上経つと無価値で、耐震性能の問題があるので、広い庭に加えて、新しい家が条件だったが、そんな家はなかなか売りに出ないのである。しかも、福岡の不動産はとにかく人気で、遅れると前回の二の舞である。糸島市はとくに人気だ。そのため、見に行って問題がないと判断し、その場で即決した。実際、私が仮押さえした直後に別の申し込みがあったという。危ないところだった。

かくして、移住に向けた作業が始まった。