断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

帰国

昨晩、台湾から帰国した。

ツノゼミなどの生物地理を研究している国立台湾師範大学の林仲平先生の研究室を訪問し、今後の共同研究の相談をした。いろいろと面白い案が出て、非常に建設的な打ち合わせだった。

またトンボやゲンゴロウを研究している汪澤宏先生もお見えになり、台湾のゲンゴロウ事情をお聞きできたのは収穫だった。日本では絶滅寸前のフチトリゲンゴロウもいるところにはいるらしい。

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同じ大学で爬虫類と魚類を研究している林思民先生(前日に台中でもお会いした)の研究室にもお邪魔した。いろいろな魚やトカゲが飼育されており、とても面白かった。

f:id:dantyutei:20141028172721j:plainこの写真は台中

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その後、黄仕傑さんのご案内で台北の森でアリヅカコオロギを探した。しかし見つからず。

それから、今回は歓迎の嵐で、お金を使うことがほとんどなかったので、本屋さんに連れて行っていただき、たくさん本を買った。自然史関係の本が日本並みに充実している国はアジアでは台湾以外にないだろう。

空港にカタゾウムシの巨大模型があった。

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今回はとにかくあちこちでいろいろな方にお世話になった。みなさん本当に良い人で、いつも感激した。これほど気持ちの良い旅行はこれまでになかったと思う。台湾の昆虫相や昆虫に関する知見に出来るだけ貢献できればと思った。

北へ

朝食は台南名物のサバヒーの食堂に出かけた。タイやマレーシアで食べたときにはあまり美味しい魚とは思えなかったが、気温が低いせいか脂が乗っていて、とてもおいしい。サバヒーを見なおした。

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食堂の裏手にある台湾最初の学校を見に行く。

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日本時代に補修に際して献金した人の碑がある。日本の企業や個人も名を連ねている。ここにいた案内係のおじさんがわざわざ見せてくれた。

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それから台中の国立自然科学博物館へ。ハムシの李奇峰さんやシロアリの李後鋒さんなど、私と会いたいという方々が集まってくださったそうだ。ありがたいことです。

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カタゾウムシの分子系統をやっている曾惠芸さんという院生の方がいて、ルソン北部の離島の貴重なカタゾウをたくさんいただいてしまった。

http://web.ntnu.edu.tw/~treehopper/index.php?page=people&p=hui_yun_tseng&lang=zh

カタゾウムシの色彩が警告色であることを初めて検証した論文を最近出版した人。

http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0091777

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今日は黄さんのお宅に御厄介になる。私の本を全部買ってくださっていた。感激。

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近所のおいしい中華料理店でご馳走になった。

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このビールがおいしかった。

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寝る前に臭豆腐の料理。満腹・・・。後味に臭みがあるけど、美味しい。

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台南へ

25日は朝一番へ台南へ戻る。

社頂の研究所をあとにする。初日が特別に暑かっただけで、あとは風が涼しくて快適だった。

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藍先生の研究室へお邪魔し、標本を見せていただく。こうやって墾丁の標本を大量に採集し、集積し、専門家に同定を依頼している。すごい労力である。

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その際、台湾で進行している多様性解明事業についていろいろ教えていただいた。一番すごいと思ったのは「臺灣物種名錄」。まだ完全ではないが、非常に充実して使いやすい種名のデータベース。日本でもこれを先につくるべきではないかと思った。

http://taibnet.sinica.edu.tw/

あと、前から知ってはいたが、在野の方が作られている昆虫の写真サイト「嘎嘎昆蟲網」。これも国のデータベースと協力しているそうだ。日本にも同じような素晴らしいサイトがたくさんあるけど、国のデータベースと協力関係にあるという話しは知らない。

http://gaga.biodiv.tw/9701bx/in94.htm

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夜はヤギの鍋のお店へ。とてつもなくおいしかった。

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この晩は藍先生の学生さんの家に泊めていただいた。黄さんと梁君と深夜まで虫の話しで盛り上がった。

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香蕉湾と壽峠林道

24日は最後の採集日だった。ということを知らずに1日を過ごした。この日は藍先生はお帰りになり、黄仕傑さんのご案内で、小松君と梁君と4人でまわった。

台湾最南端のセブンイレブン。台湾にはいたるところにセブンイレブンがある。店内には「関東煮」と書かれた<おでん>が売っている。

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午前中は香蕉湾へ。素晴らしい海岸林なのだが、あまりにも特殊な環境で、一朝一夕には虫が採れそうもない。1時間ほど散策してお昼休みとした。

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ゴバンノアシの花。

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お昼は海辺の食堂で、ここの名物の魚のチャーハンとネンジュモ属の「雨來菇(雨後のキノコの意味)」を食べた。日本で言う「石クラゲ」だが、こちらでは栽培されている。食感が良くて美味しい。

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午後からは壽卡林道というところへ連れて行っていただいた。良い森だが、とくに保護区ではないそうだ。台湾には良い森があちこちに残っているということを知った。

シイ属の木を長竿で掬って、シカツノゼミを採ってもらったりした。

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立派なナナフシも。

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夜は餃子。

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セブンイレブンで犬が買い物をしていた。

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社頂

昨晩はものすごい暑さで、全身ベトベトで起床した。皆さん暑さで苦しんだようだ。

昨日も植物園を歩いた。めぼしい成果はなかったが、ツシマハリアリからオオエグリゴミムシと正体不明のアリヅカムシが採れた。それと、梁維仁君のお手柄で、ハシリハリアリから、これまでマレーシアとタイからのみ知られてた属の新種が見つかった。これは嬉しいし、びっくりした。

小松君は復活したが、私もずいぶんと石を起こして疲れてしまった。

隆起サンゴの森で、とにかく起こす石が多い。公園なのに倒木がそのままになっているのもいい。

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ゴバンノアシが成っていた。

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益本さんは不調で、昨晩はホテルにお泊まりとなった。夕飯は恒春の町で餃子の専門店。とてもおいしい。

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今日は宿舎の周辺、社頂を歩きまわった。私は昨日のハネカクシの追加が採りたくてたまらなかったのだが、それは見つからなかった。しかし、帰り際にタイワンシロアリの菌園を掘りだした。形の美しさに台湾の先生方は大喜びだった。今回は相当菌園を探していたのだが、乾季の厳しい場所のせいか地下の深くにあるようで、なかなか見つかなかった。

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夕方、全員で大騒ぎしながら菌園を崩した。そこからTermitodiscusというこれまでインドからのみ見つかっていた属のハネカクシが見つかり、一同大喜びした。しかし、1頭だけのそれを撮影中に失くしてしまうという事件で今日の採集は幕を閉じたのだった。菌園さえ見つかればまた採れるだろう。

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f:id:dantyutei:20141023211654j:plain黄仕傑さん撮影

墾丁公園の昆虫全体の調査の一環で今回はお呼ばれしている。皆さんは遅くまで罠で採れた虫の仕分けをしている。

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海辺にて

昨日は南仁山というところで、往復10キロほど歩いた。小松君は石を起こしながら歩いていた。突き当りの頂上近くに貯水池があり、いかにも水生昆虫が豊富そうだったので、小松君は夜になってそこに出かけた。

今朝小松君が疲れ果てた顔をしており、血尿が出たという。たしかに20キロ近く歩いて、重い石を起こしまくれば、そうなるだろう。

昼からは墾丁公園森林遊楽区というところを調査地とし、宿泊は社頂というところにある国立公園の基地になった。ここもwifiがある。

森林遊楽区はなかなか楽しいところで、石がごろごろとしている。今日は小松君に代わって私もたくさん起こした。ハネカクシやアリも採れたのだが、傑作は30センチくらいの石の下に空間があって、そこにヘリグロヒキガエルが10頭くらい寄せ集まっていたこと。たぶん昼間のねぐらなのだろう。

通じた

台湾で驚いたのは、道路に全然ゴミが落ちていないこと。日本以上にきれいである。人々もすばらしい。戦争中、日本人は中国の人たちに「昔の日本人の礼儀正しさ」を見たそうだが、そういうものが今でも台湾には残っているのかもしれない。 

実は台湾は2回目で、1997年、最初の海外旅行が台湾の一人旅だった。今日通過した町「恒春」(名前がいい)も思い出の町で、そこからバスで墾丁国家公園に行った後、帰りのバスがなくて、ヒッチハイクで戻ったのを覚えている。その頃から台湾の人たちは当然親切だったわけだけど、これまでにいろいろな国に出かけて、こうして改めて台湾に行くと、そのことが強く実感できた。

今日はお昼に牛肉麺を食べた後、墾丁国家公園の山あいに入った。アリとシロアリの巣を探すのが主目的だったのだが、地中に石の多い環境で、地面を掘るのが困難で、何も成果がなかった。明日は別の場所でやる予定。なんとか自前で書ける新種を見つけなければ。

今は公園の宿舎にいるのだが、快適な場所で、ネットも通じた。

Ilha Formosa

10時45分の飛行機で福岡をたち、現地時刻の12時半に台湾に到着した。昨日知ったことだが、現地で昆虫の本などを書いている有名人の黄仕傑さんとそのお友達のツノゼミ好きの方が迎えに来てくださった。嬉しい。

そのまま黄さんの車で駅まで送っていただき、新幹線に乗車した。小松君がすごい顔をしていることに注目。

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台南の駅で、益本さん、そして今回の受け入れ研究者の藍先生と、そのお友達、元学生さんと合流した。

ホテルに到着後、藍先生のお知り合いの喫茶店で、いろいろな相談をする。なんだか会うべき人がたくさんいるようで、後半は忙しくなりそうだ。今回はいろいろな人脈を作るのも

夕飯は担仔麺で有名な「度小月」というお店でご馳走になった。とても美味しい。今回の旅行で痩せようと思っているのに、どれも美味しくて危険だ。

至れり尽くせりで、空港から一度もお金を使う機会がない・・・。(払う努力はしているのだけど。)せめてなにかに貢献できるよう調査を頑張らなくては。

明日からネットのない環境に行きますので、用事のある方は携帯にお電話ください。

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朗報

学振の発表の季節になった。教え子と外国から嬉しいお知らせが2つもあった。昨日は金尾君と2人で祝勝会をした。嬉しくて、うるっときた。

朝から論文の査読を3つ返して、自分の論文も投稿した。3年前にロンドンの博物館でタイプ標本を見てきた成果の第一報で、山本君とタロウ君との共著である。

明日から台湾なので、最後の日本食をと思い、今日の昼は茶坊主と回転寿司に行って、100円の皿を10枚食べた。

 

募集案件

ドイツ箱と桐箱の交換募集

甲虫標本(中條標本)整理用のドイツ箱が足りずに困っております。状態の良い中古の印籠箱(大きさは中:新品で3000円相当)を30個と、ドイツ箱5箱(新品バードウイングのペフなし黒:1箱7400円)を交換希望です。佐々治先生の箱です。コルク張りです。

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