断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

「日本の渚―失われゆく海辺の自然:加藤 真(著)」(岩波新書

1年位前に読んだ本だが、いつ読み返してもいい本なので、昆虫学会の行き帰りの新幹線で読んだ。新書は割りと読むが、高校生のときに読んだ「デカルト野田又夫 (著)(岩波新書)」以来、心から感動する新書に巡り合えた。もちろん、新書に感動を求めているわけではないが。なお、つい最近「デカルト」を改めて買って読み返したが、何に感動したのかサッパリわからなかった。

さて、この「日本の渚」の感想は簡単にはまとめきれない。まず、河口からマングローブ林やサンゴ礁まで、日本の渚の景観と生物の優れたレヴューであり、日本文化と渚との関係を考証を交えた、現代の日本の海岸の荒廃に対する警鐘である。そしてこれらの内容が情感にあふれた美しい文章で綴られている。

自分も江戸川の河口干潟で遊んで育ったので、渚の生物に対する愛着や関心は非常に大きい。しかし、この本で知った日本の渚の現状は憂うものばかりで、著者の警鐘に関する共感と、現状への怒りを感じた。同時に、まだ極わずかに残っている美しい日本の渚と様々な生物に関して、少しでも残って欲しいという、これまた著者への共感と、それらの生物に対する心和む愛着を感じた。したがって、読み進めながら様々な感情が交差し、それだけに心に残る余韻は大きかった。

日本の渚―失われゆく海辺の自然 (岩波新書)

日本の渚―失われゆく海辺の自然 (岩波新書)