断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今日からエクスカーションである。まずは、いつものように7時に会場へバスで行き、朝食をとり、そのあと今後のANeTに関するミーティングが行われた。今後の活動として、「Asian Myrmecology」という雑誌を出版することと、次回2007年のANeTが北インドで開かれることになったのが重要な決定事項だった。なかでも雑誌出版は画期的である。東南アジア各国のアリ研究者に発表の場を提供し、彼らのレベル向上につながるであろうし、ANeTメンバーのすでに一流の研究者が寄稿すれば、これ以上の刺激はないと思う。活動が年々規模を増し、ついに雑誌までできるとは、今後ますますANeTの発展が期待できる。

そのあといったん宿泊所へ戻り、荷造りを行い、また会場へ戻り、こんどは軽い昼食と部屋代の会計をする。そして会場でしばし時間をつぶし、また宿泊所へ戻り、ようやく3時近くにバスが来て、Ulu Gombakへ向かった。

着いてからは部屋割りをしたが、男女合わせて40人近くいたので、施設はほぼ満員だった。行きなれた場所だが、ここまで大勢の人がいると、どこか違う場所に来たような感じがした。

ここ数日雨がちで、ときに大雨が続いたので、FITが心配だった。着いて早々に見てまわるが、いくつかはケモノに受け皿を蹴飛ばされて水があふれていたが、ほとんどが雨の影響を受けておらず、安心した。

施設の前の周りに人だかりが出来ているので行くと、Cladomyrma ptalaeという植物アリの観察会をしていた。以前からこのアリがそこにいるのは知っていたが、恥ずかしながらてっきりシリアゲアリだと思っていた。亜科が違うが習性も形態も植物アリのシリアゲアリによく似ていた。

とにかく林全体がひどく湿っている。初日にサスライアリ採集用のヤシ油のトラップも仕掛けたが、ほとんどに雨が流れ込み、効果を無くしていた。

そうこうしているうちに夕食となり、夜はひたすらに林内を歩き回った。さすが大人数で行っただけのことはあり、いろいろな人と林内で出会った。いつもは虫とカエルの声しか聞こえない暗い林内で孤独感を感じながら採集していたが、今日はなんだか楽しい。

オオアリ研究者のPfeifferさんは赤いヘッドライトを点けていた。オオアリは臆病なものが多く、脅かさずに調査するための配慮であろう。こういうところに研究対象の違いが見えて面白い。

こちらは大城戸さんと田中君と歩き回る。途中で小松君を発見するが、非常に興奮している。なにかと思ったら、ヒメサスライアリを見つけたという。少し頂戴するが、あとで山根さんに見てもらうと、未記載種の可能性が高い珍しいものだそうだ。小松君はヒメサスライアリが最も見たい昆虫だったそうで、とても満足気だった。

結局、その夜は消灯の1時近くまで歩き回った。

写真は緑色の見事なアシダカグモ