断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

さて、専門外の分類群でも一通りの甲虫を採集しようと思ったのは、ウィーンの博物館を訪れた際、そこの館員たちの1回の調査の成果を見て圧倒されたからである。その成果とは量と質である。まず量がすごい。1度の調査で甲虫だけで数万頭は必ず押さえてくる。そして質である。同じ1000頭の虫を採っても、採り方や採る人によって、質が全く違うものだが、専門外の人が、専門家が見て珍しいものを採ってくるところがすごい。同じ甲虫研究者であっても、これはなかなかできないことである。

なぜ日本の調査隊とは違うのだろうか。向こうの人の調査には、「博物館の収蔵を増やす」という、明確な目標があって、その点で収蔵に限界のある日本の調査とは一線を画している。さらに、彼らには海外調査の長い歴史があって、その膨大な収蔵が頭に焼きついているものだから、なにか成果の基準のようなものが頭の片隅にあるのかもしれない。

そんなことに影響された私は、なんでもかんでも採ってくることを心がけているのだが、自分の成果にもつながり、かつ他の研究者にとっても喜ばれるものが採れる方法としてFITがあり、いまや毎度の調査に欠かせない道具となっている。行くたびに30-40基を10日ほど掛け、平均して5万頭ほどの甲虫を採集している。写真のものは、何人かの人のFITをもとにし、自分で考えた。利点が多く、これ以外のFITは今更使えないと思っている。

ところで、FITの作成に必要なA3クリアファイルや受け皿のフルーツパックがアメリカでは手に入らない。こちらでも仕掛けようと思っていたのだが、どうしたものか。海外の研究者からどんなFITを使っているのかとよく聞かれるが、このFITは全く同じ材料を使用して海外で製作することができないかもしれない。

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