断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

朝起きて最後の洗濯をする。今日は薄曇で天気が持ちそうだ。セミナーの一陣が昼過ぎに帰った。明日からまた同じ趣旨の別の一陣が来るそうだ。今日の昼は野菜のカレーとイカのカレーを餅状に固めた米にかけたもので、最高においしかった。

4月30日のヒメサスライアリがどうなったかと思い、様子を見に13時から森へ出る。橋を渡ってすぐのところに行列があり、歩道脇に野営巣を見つけた。移動させようと思い、巣をつつくと、どっと働きアリが出てくる。そして10分くらいすると、ようやく移動が始まった。

しかしよく見ると、働きアリがすべて幼虫を抱えている。幼虫は先日ほとんど採りつくしたはずだ。そして次々にハネカクシがやってくる。不思議に思いながらも採集を続け、あまりの蟻客と幼虫の多さに、1時間後に別の巣であると確信した。そして3時間後の16時ごろに女王が現れたので採集する。

また、働きアリに抱えられた幼虫をじっくりと観察し、幼虫に異質なものが混じっていないか、つまりVestigipodaを抱えていないか目を皿にする。たしかにいる。しかし、非常に少ない。だいたい、30分から50分おきくらいに抱えられてくる。色合いですぐにわかるので、見落としはないだろう。そして移動の完全に終わった19時を目前に5個体がまとめて運ばれてきた。

前回の巣で採れなかった大型のAenictocleptis属のハネカクシが複数得られ、前回は少数だったアリの背や幼虫に便乗するAenictoxenus属のハネカクシが多数得られた点で、今回の巣は様子が少し違った。結局、ハネカクシとシミ、ハエをあわせると、200頭ほどの蟻客を得ることができた。働きアリの数を10万と仮定すると500頭に1頭の割合で蟻客がいることになる。

今日は蟻に併走するWeissflogia rhopalogasterの写真が撮れたのも収穫だった。ヒメサスライアリの歩行速度は尋常ではなく、ハネカクシはそれに一歩劣るが、それでも早い。唯一の救いは歩く方向が決まっていることだが、長くて重いレンズのついたカメラで小さな虫のピンを合わせることは至難の業である。

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宿舎に戻り、シャツを脱ぐとポトリと大きなヒルが落ちてきた。いつものことであるが、首の真ん中から血が流れてきた。その直後、19時過ぎにロスリーさんがやってきた。しばしお待ちいただいたあとに食事に行き、あんかけ焼きそばにサテーというマレー風焼き鳥をご馳走にある。それにしてもおいしいサテーだった。

再び宿舎に戻ったときには21時を過ぎていたが、2時間かけて標本の整理や行動の観察、生体の撮影をする。

23時過ぎにロスリーさんを誘って夜のお楽しみに出かける。「これが毎晩唯一の娯楽なんです」と言ったら笑っていた。

今日は移動の最初から眺めて蟻客を採り尽くし、十分に満足のできる結果であった。吸虫管で行列に触れる際や女王の捜索隊が体に登ってくるときにどうしても刺されてしまい、今日も20箇所くらいを刺されたのだが、だんだんと刺された跡に隙間がなくなって来たことに気付いた。