断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

今回の調査でしみじみと思ったのは、グンタイアリのいる環境というのは、それだけで特殊ということである。いや、実際にその地理的な範囲は広いのだから、グンタイアリのいないアジアと全然違うと言ったほうがよいだろう。グンタイアリの絨毯攻撃を受けた場所は、地上やあるていどの高さまでの樹上の生き物が、ほぼ一掃されてしまう(グンタイアリに食べられてしまう)。そのせいか、アジアの熱帯に比べ、樹上の高いところで繁栄した生き物が非常に多い。たとえばツノゼミは、アジアでは手の届く程度の木の低いところにしか生息していない。しかし新熱帯では樹冠にも非常に多くの種が生息していることがわかっている。想像にすぎないが、グンタイアリのいる環境では、常に「上へ逃げなきゃ」という圧力がかかっており、それが多くの昆虫に対して樹上の高い場所に適応する機会を増やしているのではないだろうか。だからといって、足元に何もいないわけではない。グンタイアリの捕食に対して動じない昆虫が少なからずいる。写真のバッタは、一見何の変哲もないバッタであるが、グンタイアリの行列に置いても、全く捕食されない。おそらくグンタイアリの感知しにくい成分を身にまとっているか、グンタイアリの嫌う匂いを発しているのであろう。バッタは一般にグンタイアリに好まれる捕食対象であるが、捕食されないバッタというのも意外に多い。