断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

伊達騒動

私が院生のときには「種問題」に関する議論が盛んだった。「科学とは何か問題」と同じで基本的に不毛な議論だったが、唯一不毛でない点があったとすれば、自分の研究分野というもの、そして自分の立ち位置について考える機会を得たということだろうか。

植物分類学会のニュースにそのなかでも有名な伊達騒動について書いてある。「種類」などと言ってしまう若者分類屋にも一読の価値あり、かもしれない。

http://www.e-jsps.com/2007hp/topic/Datesoudo84/date.html

回る鍋の肉

今日も野菜の残りの消費。以前にいろいろな中華調味料を買って使っていなかったので、回鍋肉を作った。肉に下味を付けて、軽く火を通し、その後に野菜を炒め、肉を戻し、甜麺醤、豆板醤、オイスターソース、醤油、みりん、味噌、水、片栗粉を混ぜたものを加えた。すべて適当だけど、お店の味に近いものができた。

昆虫ブログだが、料理の話しは人畜無害な記録だと思って、これからもちょくちょく載せていく。

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飼育

ツムギアリを飼育している。空調完備なので、住みやすい環境だとは思うが、弱り気味のコロニーなので、少し心配である。うまく働きアリが増えて欲しい。マダラスズを与えたらなんとか食べたが、オンブバッタは今一つ不人氣だった。

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写真家の山口さんからブラックベリーのシムフリー携帯電話をいただいた。カンボジアで茶坊主と連絡を取るために安い携帯を買ったのだが、現地で携帯電話があることの便利さに目覚めた。トランシーバー代わりに使えるのが良い。これはいろいろ遊べそう。

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「昆虫はすごい」が1万部増刷になるそうで、こんどは全面帶になるそうだ。それでお気に入りの奇麗な虫の写真を出版社にお送りした。どんなものになるか楽しみだ。

この本のおかげで10月はラジオ、11月はテレビの出演で上京することになった。出演するのは(非常に!)恥ずかしいが、少しでも他の自著の販売促進になればと思っている。とくに「アリの巣の生きもの図鑑」や「アリの巣をめぐる冒険」が売れて欲しい。

「昆虫はすごい」の裏話3

編集

「昆虫はすごい」の裏話1 - 断虫亭日乗

「昆虫はすごい」の裏話2 - 断虫亭日乗

の続き

それから執筆の日々である。夕方の数時間を使って、1か月ほどかかった。その間に、さらに小見出しや話題を加えていった。

その次に大変だったのは、参考文献の抽出である。昆虫雑学本はいくつかあるし、著名な先生が随筆などで語るものもあるが、そういうものには不正確な内容が少なくない。そのときに大切になるのが参考文献である。今回の本では、それらの本と一線画すために、参考文献の抽出にはこだわった。ただし、頁数の問題、見た目の問題から、総説や初出を尊重し、本数は絞らざるを得なかった。一つの現象にしても、本当にそれが適切な文献であるのかは、最後まで迷ったところである。

次に写真の選定である。これには伊丹市昆虫館の奥山さんと長島さん、さらに小松君と島田さんに大変お世話になった。他の方々にも数点の写真を提供いただいた。

同時に自主的な内容校閲である。全般を神戸大の杉浦真治さんに、社会性昆虫の部分を香川大の伊藤文紀さんにお読みいただいた。お二人の訂正は本当にありがたかった。また、杉浦さんは同世代で一番尊敬する生態学者だが、やっぱりかなりのことをご存知で、この方こそ本を書くべきだと思った。

それから文章そのものの校正である。今回はとある個人編集者を介した企画だったのだが、その方の校正が全く役に立たなかった。それどころか改悪される一方で、二度手間を繰り返した。去る方によると編集者とケンカするほど良いものができるということだが、そういう意味では正解だったのかもしれない。

心配だったので、普段からお世話になっている生物系編集者の本郷さんに見ていただいて、かなり改善された。同時に知人やその知人の昆虫素人さんたちにも見ていただき、わかりにくいところを教えていただいた。最後に光文社の編集方と同社の校閲部の方々にもかなり直していただいた。そういうわけで、実にいろいろな人に原稿を見ていただいた。

恥ずかしがって原稿を他人にあまり見せない人がいるが、見てくれる人には全員に見せるくらいの考えで、一般書については「本当の意味でいろいろな人」に見てもらったほうがいい。

本書に関してお世話になった方々、ありがとうございました。

おわり

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余談だが、出版直後にとある若手生態学者からネタ本があるのではないかと疑いのメールが来て笑ってしまった。もちろんそんなものは一つもなく、自分で書き集めたネタである。特定の分類群や共通の生態をもつ昆虫の生態的な総説はもちろん有用だし、「2」にも少し書いたが、分類学の総説にあるちょっとした記述は穴場である。

今回の昆虫学会の学生の感想でも思ったし、ネット上の若手による論文紹介でも感じるところだが、系統と分類に関する知識がないと、なにが面白いのか、それが本当に面白い発見なのか、とんだ思い違いをしてしまうことがある。論文というのは方法論がしっかりしていれば、査読者によっては簡単に通ってしまうことがある。誰のとは言わないが、超一流雑誌に出た系統進化論文でも、甲虫屋の私から見たら、分類群の選択で大間違いのものもいくつかあった。

あとがきに分類屋の私がこんなものを書いて良かったのかと書いたが、いろいろ虫を見ている(まだまだだけど)からこその、こなれた視点で書けた部分はあったと思う。また博物館で子供たちの質問に答える日々も役に立ったと思う。総花的ではあるが、昆虫のすごさを一般の人に伝える手段としては、良いものができたのではないかと思う。

塩焼そば変形

2011年の3月から5月までロンドンにいた。その滞在中、後半はアパートを借りていたので、毎日自炊していた。とはいってもロンドンのスーパーは私の苦手なパンとソーセージのようなものばかりで、なかなか良い食材がなかった。そのなかで唯一、中華麺モドキが救いだった。腰のないラーメンとうどんの中間のようなものである。バサバサのソフト麺のようなものともいえる。私はそれを使って毎日のようにあんかけ焼きそばを作っていた。ちょうど311で日本が大変なときで、「日本は大丈夫だろうか」などと鬱々と考えながら、作っていたのを覚えている。

昨日は博物館のバーベキュー大会だったのだが、野菜がたくさんあまったので、もらってきた。作りそびれた焼きそば(まるちゃんの塩焼そば)があったので、ついでにそれももらってきた。そこで、あんかけ焼きそばを思い出し、作ってみることにした。

作り方は簡単で、まず麺を蒸して、ほぐし、それから油でカリっと焼き上げる。それを皿にあげ、次に肉と野菜を炒める。それから、焼きそば付属の味付けの元をコップ一杯の水で溶かし、それに片栗粉を混ぜて、炒めた野菜に加える。それで一煮立ちしたら、焼き上げた麺のうえにかければよい。所要時間は10分ほど。

あんかけ焼きそばは大好きなのだが、福岡には気軽に食べられる店があまりない(ラーメン屋は多いが、街の中華店があまりない)。なかなかおいしくできたので、また作りたいと思う。

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日常へ

学会が終わってから、妙にいそがしい。今日は学生4人と昆虫学会の反省会。感想や今後の展望について話した。

今日まで吉武君が来ていて、カタゾウムシについていろいろ教えてもらった。本当にありがたい。

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関係ないけど、「昆虫はすごい (光文社新書)」がようやくAmazonで「在庫あり」になった。売上も落ち着いたのだろう。

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近所の川を覗いたら、クサフグとコノシロに交って、超大型のサヨリが泳いでいた。ここでは初めて見る。ダツかと一瞬考えてしまったほど。

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研究室のガガイモが咲き始めた。手前のHuernia zebrinaはいつ見ても珍妙で良い感じ。

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昆虫学会より戻る

週末は昆虫学会に出かけていた。

初日は「未来の科学者を育てる」というシンポジウムだった。子供たちの理科離れに対する問題も含めたものだと思う。最初の五箇さんの講演が最高に面白かった。五箇さんは有名人でテレビにもよく出ているが、同時に正統な研究もしっかりやっているので、砕けた話しにも説得力がある。2番目の方は・・・会長の「まったく共感できないし、議論にならない」というご意見に賛成。3番目の中学生のダンゴムシの講演も実に面白かった。その研究の内容には単純に感心したし、中学生の女の子らしさを正直に出した内容に心が温まった人は多いと思う。最後に井上さんの女研究者の就職と仕事の問題。男として考えさせられる内容であり、問題に対する冷静な分析と苦労時代の真摯な姿勢に共感を覚えた。しかし皮肉というか幸運なことに、最後の会場にいた主婦の方の意見が、このシンポジウムの趣旨に一番合致するようにも思えた。(もちろん、こういうシンポジウムを趣旨通りに組むというのは非常に難しいと思う。)

2日目は一般講演のあとに「秋の学校」というシンポジウムだった。これも大変面白かった。とくに深津さんの研究の面白さと勢いにはびっくりした。その他の先生方の講演も聞いて、教育者としていろいろと考えさせられた。学生向けのシンポだったようだが、本当に聴いて良かった。今回の学会で一番お得感のある内容だった。

来年の昆虫学会は福岡で、私はシンポジウム担当なので、何にしようかと今から頭を悩ませている。今回は面白いことを詰め込み過ぎて、しばらくは真似できない(重複してしまうという意味で)ことばかり。ズルイという印象だった。

今回は例年と一日ずれたプログラムで、最終日の今日は平日になってしまい、多くの人(働いている方)が最終日に参加できないというのが残念だった。

その最終日は朝から講演を聞いてまわる。分子系統を使った発表が多かったが、「その系統樹からそれは言えないだろ」という発表が少なからずあったのは気になった。分子系統解析は統計なんだから、支持の弱い分岐に対して物語を作ってはいけない。

それと、細かいことだが、speciesに対して「種類」という言葉を使っていた学生やポスドクが半分以上いたと思う。あくまで「種」。

またさらに細かいことだが、座長になった人が、次の発表の著者全員の名前を読み上げるのにはイライラした。ただでさえ時間が押して質問できないこともあるのに、発表者の時間を削る妨害行為だと思う。

最後に好蟻性小集会。椅子が一つもない超満員状態だった。(募集時に例年の参加人数を訊いておくべきだと学んだ。)私を含め、今日中に帰る人が中座したが、盛り上がっていたようだ。最初の小松君の講演を聴いてギリギリの電車で帰った人が多かったので、小松君を最初にしてよかった。

とにかく楽しい学会だった。少人数の運営事務局で大変だったと思う。お疲れさまでした。

発表練習

昨日は解析結果を見てデータの入れ替わりがあることが判明。急いで実験してくれた板谷君を呼んで、確認してもらったら、シーケンスの際に1列だけ逆に入れていたようだ・・・。焦った。というわけで、解析のやり直し。

そうしたら割と良い(納得のいく)系統樹ができて、まあ発表に使えるだろうとパワーポイントを作った。

しかし、明らかに過労気味。微熱が出て、頭痛がして、調子が悪くなっている・・・。

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今日はヒメサスライアリの同定などしつつ、パワーポイントの訂正。夕方から学生4人とともに練習会。みんな良くできていた。私はなんと8分で終わってしまった。

練習後、河野君を部屋に呼んでハチの標本を渡した際、私の魚をみて絶賛していたので、好印象を受けた。

それから、8分ではマズイので、スライドを追加した。なかなか面白くなったと思う。

最終日である16日は、面白そうな小集会が重なっている。でも間違いなく、「好蟻性小集会」が面白い。金尾君の発表(本発表に収まらないので、小集会にした)は、誰もが聞く価値がある。

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私をふくめ全員メガネっ子だった。

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準備開始

今年の昆虫学会(今週末)では、「ヒメサスライアリ属の系統と進化」という題で講演をするのだが、ようやく最終的な塩基配列が揃った。そして現在解析中。あまりに久しぶりで忘れてしまって、金尾君に教えてもらうという體たらく。

その前に演題に沿うような結果が得られるのだろうか。予備的な解析では、何か言えそうな系統樹は出ている。共著者の皆さま、前日あたりまでスライドはお待ちください。すみません。

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休日・4重版

今日はお休みと位置付けた。朝、ダイコンの種を1畝ぶん蒔いた。

メガネが傷だらけで、もう限界だったので、天神のソラリアプラザのJINSというお店に買いにでかけた。好みの形のものが多くて迷ったが、あまり変わらない茶色いものにした。

それからジュンク堂にでかけ、副店長にご挨拶。丸山・小松コーナーを作ってくださっていると稲さんに聞いていたからである。予想以上に丸山・小松コーナーだった。

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今週から旧工学系の建物の本格的な解体が始まりつつある。まずは建物のまわりの木を切る作業が行われており、なんだか淋しい光景になってしまった。木が切られるというのは心がいたむ。多少お金がかかっても、ぜんぶ伊都キャンパスに植えかえて欲しいものだ。

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夕方、編集の方よりメールがあり、「昆虫はすごい」の第4重版がかかったとのこと。これを機に貯蓄しようと思う。

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研究室のガガイモが大きくなったので、棚間を調整した。種数は最盛期の半分になって、結局、丈夫なものが残った。でもちょうどいい鉢数かもしれない。

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事務のおじさんにシシトウをいただいたので、シシトウの肉詰め餃子を作った。シシトウを半分に切り、そこに餃子のタネを詰めて、餃子の皮でくるりと巻く。肉汁が皮とシシトウの間に溜まり、たいへん美味だった。

少し前にたまたまネットで見て、おいしそうだなと思っていた。

参考:http://www.recipe-blog.jp/blog/higuccini/2014/07/post-83.html

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