断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

朝起きると高久さんが人糞トラップを見回って戻ってきた。なんと、人糞まで全部なくなってしまっていたらしい。犬の通り道のそばに仕掛けたのがいけなかったのだが、そもそも犬が人糞まで食べてしまうとは予想外だった。

顔を洗うと、口元に帯状の疱疹ができていた。昨晩からヒリヒリしていたが、思い返すと、アリガタハネカクシPaederus sp.を指でつまんで、その手で鼻を掻いたのが原因のような気がする。

朝食はカップラーメン。今日は二手に分かれて行動することになった。ハルティニさん、高久さん、澤田さんが車で牧場めぐり、カホノさん、小林さん、私が植物園に残って採集である。とりあえず、腐肉も人糞もなくなってしまっては、手ぶらで帰ることになってしまうので、昨日ハルティニさんが使用したトラップを頂戴し、犬に持っていかれなかった箇所に設置した。

設置から帰る途中、ヒメサスライアリの一種Aenictus cf. gracilisの行列を見つけ、撮影しながらビバークを探す。ビバークが見つかれば、必ず好蟻性のハネカクシも見つかるはずである。また、ジャワ・バリ周辺からヒメサスライアリの蟻客の記録はほとんどないので、もし見つかれば必ず新種である。昼までの3時間をビバーク探しに費やしたが、残念ながら見つからなかった。

宿舎へ付く直前に急に大雨が降り出し、走って帰る。戻るとカホノさんと小林さんも走ってきていた。昼食は鶏肉などが混ざったご飯。

カホノさんと小林さんはイラクサに付くニジュウヤホシテントウの仲間Epirachna spp.を探していたが、目的のものが見つかったようだ。この付近はいろいろなイラクサがあり、その種ごとに違うテントウムシが住んでいるそうだ。

雨もやみ、出かけようとしたら、宿舎の門のところにヒメサスライアリの仲間が来ていて、塀の隙間に営巣しているアメイロアリの一種Paratrechina sp.の巣を襲撃しているところだった。巣から次々に幼虫や蛹や成虫が運び出されている。その周辺には、幼虫を抱えて逃げ惑うアメイロアリの職アリもいて、茫然自失といった感じだった。観察していると、抵抗するアメイロケアリの成虫に対しては、何度も毒針を刺し、弱らせてから改めて運んでいた。また、逃げているアメイロアリを捕まえてヒメサスライアリのそばに置くと、飛び掛って捕まえた。ついでに、付近を歩いているオオズアリの一種Pheidole sp.の職アリを置いてみたが、少しは反応するものの、結局は放棄した。どうやらこのヒメサスライアリは、オオズアリは好みではないらしい。

その後も、最初に見つけたヒメサスライアリのビバークを探すが、気づいたら夕方の18時近くなっていた。結局収穫はなし。今日は50箇所以上、蚊に刺され、あちこちが痒い。マラリアやデングのない地域では、蚊取り線香や虫除けは採集に影響が出そうなので、蚊に刺されるがままにしている。

宿舎に戻ると、糞虫組が戻っていた。キンタマ-ニ湖の周辺へ行ったが、雨にたたられ、成果はほとんどなかったそうだ。また、ナンバンダイコクコガネHeliocopris sp.の坑道を見つけたが、深すぎて届かなかった由。

夕食は豪華にビールとバリ名物の米酒、ウサギのサテーに、ヤギのスープだった。

写真は、ヒメサスライアリがアメイロアリに毒針を刺すところ。