断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

物が多いというのは、フットワークを重くする。今後何かと移動の機会が予想される身にとっては、深刻な悩みになる。本であれば、売ってしまったり、どこかに放っておいても大丈夫だが、問題は昆虫の乾燥標本である。今日、自分のハネカクシの標本箱を改めて数えたら、大型インロー式桐製標本箱にして80箱以上あった。普通の昆虫収集家において80箱など大したことないが、微小なハネカクシなので、1箱に平均500頭程度入っていることを考えると、約4万頭、コレクションとしてはまあまあの量といえる。それで今日、野村さんと相談し、大部分を科博に寄贈させてもらうことにした。これでスッキリ。手元には、借り出し中の数箱と自分の20箱程度置く予定だが、これだけで、あと数十年の仕事にはなるだろう。また、まだアルコールに漬けてある標本が15万頭以上あり、今後はこのなかから自分の専門だけを選んで乾燥標本化し、研究に使用することにした。残りはヨーロッパの研究者に配布し、有効利用してもらえるようになればいいと思っている。これらの標本には、相当に貴重なものも多く含まれ、未記載種もかなりある。だから本当ならば、国内の施設に収蔵するのが、貧弱な日本の昆虫コレクションのためには重要だろう。しかし残念ながら、15万頭すべてのハネカクシを標本化し、収蔵できる施設は、今の日本にはない。かといって、アルコールに漬けたままでは、標本は退色し、劣化してしまう。世界の研究のためには、海外の施設に任せるほうが有益だが、悩ましい問題だ。

↓応援よろしくおねがいします!