断虫亭日乗

過ぎ去る日々の思い出をつづるだけ

学生にやってほしい課題

遡ること20数年、私は大学院でアリと共生するヒゲブトハネカクシに着手、その過程で副産物的にいろいろな課題を見出し、研究の枝葉を広げてきた。一部は成果となっているが、大部分は私一人の手に負えず、学生に課題として与えることを繰り返してきた。ただし、学生のなかには自分の希望の課題を持ち込んでくる者も多く、まだまだ手元にはやるべき課題が残されている。今年は忙しく、自分の研究もろくにできなかった。今後も自分自身で研究する時間は減る一方であろう。そこで改めて、学生にやってほしい課題をまとめてみた。

 

1.ヒメサスライアリの分類学的検討 (修士で卒業する学生も可能)

この属にはオスと働きアリという2つの分類体系があり、学名が不安定な状況にある。私がマレー半島でオスの標本を大量(23種)に採集しているので、働きアリとDNAで照合し、整理を行う必要がある。オスのタイプ標本も大部分撮影済み。働きアリの系統は別の卒業生が発表する予定があり、情報も標本も揃っている。

2.ケアリ属の分類学的検討(修士で卒業する学生も可能)

まだまだ混乱している。とくにクサアリにじっくり向き合って欲しい。もうほとんど終わっているので、私がやるかもしれない。ケアリ亜属やアメイロケアリ亜属の学名の問題も残されている。日本のアリの最後の砦。

3.ヒゲブトハネカクシ亜科の分類(博士課程まで進む学生向き)

やるべきことや面白い課題が山積している。私の教え子の金尾君と山本君もやっているが、年齢に開きがあるので、これから始めるには良い。日本産甲虫の多様性解明の最後の砦であり、やりがいがある。

4.サスライアリと共生するハネカクシの分類と系統(博士課程まで進む学生向き)

上の課題と重なるが、今年から科研費をもらっているので、これから始めるには最高の課題。アフリカに行けるというおまけつき。

5.東南アジアのツノゼミの分類と系統(博士課程まで進む学生向き)

膨大な標本があり、私が老後にやろうとも思っているが、学生でやってくれる人がいたら嬉しい。70年ほど東南アジアのツノゼミはまともに研究されておらず、新発見が山ほどある。

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興味のある人は連絡ください。学生は農学部の昆虫学教室に所属することになりますが、博物館で研究することも可能です。